GNSS
GNSSで「位置」がわかる!
スマート農業では、「畑や田んぼのどの場所で一番作物が育っているか」を知ったり、ロボットトラクターが無人で作業したりするために、位置情報が必要になります。この位置情報を教えてくれるのが「GNSS」です。 GNSSとは、人工衛星を使って、高い精度で位置をみちびき出すシステムで、日本語では「全地球航法衛星システム」といいます。私たちが日常で使っているGPSも、GNSSにふくまれます。
GNSSは電波を使って計算する
GNSSでは電波を使って位置を測定します。これを「測位」といいます。人工衛星から送られた電波には、電波が送られたときの時刻が含まれています。そこで、電波が送られた時刻と実際に電波を受け取った時刻のズレから、衛星と自分の現在の位置との「距離」がわかります。ただし、これだけでは「位置」はわかりません。GNSSで位置を知るためには、1つではなくいくつかの人工衛星からの電波が必要となります。図のように、2つの衛星を使えば、交わる2つの点がわかり、3つの衛星からその2つの点のうちの1つが確定できます。さらに「高さ」を知るためには、もう1つ衛星が必要になります。しかし実際には、距離の測定にはどうしても「誤差」が生じます。誤差が発生する原因には、人工衛星の軌道のズレや、障害物による「マルチパス(電波の跳ね返り)」などがあります。
測位のための2つの方法
GNSSは電波を使って位置を測定しますが、その方法としては、大きく分けて2つあります。まず、衛星からの電波を受ける受信機1つだけで位置を測定する「単独測位」です。もっと精度を高める場合には、2つ以上の受信機を使って位置の情報を修正する「相対測位」が使われます。
リアルタイムに高い精度で測定できる方式は?
相対測位にふくまれる測位方式として「RTK(リアルタイムキネマティック)測位」と「ネットワーク型RTK測位」があります。この2つは、誤差わずか数㎝ほどという高い精度で位置を測定できるうえに、さらに衛星からの電波をすぐに(リアルタイムに)計算し測定できるので、常に動いている車両ロボットの正確な位置測定に、最も適しています。ネットワークを使用する測位方式の中で「VRS方式」は、国土地理院が全国に設置した電子基準点から位置情報を得て測位を行います。
GNSSの利用のコツ
小型の飛行ドローンなどの位置の測定には、積載量の関係から単独測位のGNSSが向いています。一方トラクターなど大きな車両ロボットなら機材の搭載の余裕があるので、相対測位のRTK測位やネットワーク型RTK測位のGNSSが向いています。 GNSSでは防風林などで衛星からの電波がさえぎられたり、都市部から遠く離れた場所では位置情報を得るスマートフォンの電波が途切れたりすることがあります。GNSSを使うときは、精度や特性、使用目的、コスト、長所や短所などを考えて方式を選びましょう。