水管理システム

「時間」と「労力」を使う水管理

水稲栽培の作業の1つである「水管理」は、総労働時間のおよそ3割を占めるといわれます。近年、機械化などによって田植えや除草などの作業時間が短縮されましたが、水管理はあいかわらず人の手に頼っています。さらに、いろいろな品種や栽培方法の水田があり、それに合わせた水管理をしなければなりません。

「ICTを用いた水管理」ってナニ?

人の労力を減らすものとして、用水路のタイプに合わせた自動給水装置が市販されていますが、これは「一定の水位を保つための半自動化(セミオート)」にすぎません。これに対してスマート農業の水管理システムは、ICT(情報通信技術)を利用して完全自動化を実現します。クラウドを介してデータを蓄積したり、さまざまなソフトを使ってパソコンやスマートフォンで天候や水温などの情報を把握し、それにもとづいて水位を変えるというふうに実際の制御を行います。

ICTによる水管理で何が期待できる?

「自動化」「デジタル化」「スマート化」が可能となります。自動化とは、複雑な水管理が完全に自動で行えることを意味します。またデジタル化することで、センサーの数値にもとづいて水管理が行われ、水位を何㎝にしたか、その期間は、などの履歴を記録として残せます。 そしてスマート化とは、水温や気象など、さまざまな情報を連携して検討できることを意味し、天候や寒暖に合わせた最適な水管理が可能となります。

画像:左の写真は水田の水位と、水温・気温のグラフで、スマートフォンなどで確認できる。

ICT水管理の具体例

ICT水管理は、「高温障害対策」として行われる飽水管理や、「低温障害対策」として幼穂の生育に合わせて寒さから守る深水管理を自動的に行うことができます。また暗闇の中で水管理を行う「夜間灌漑(かんがい)」も、スマートフォンなどを使って離れた明るい場所から行えるほか、干ばつ時の「超節水灌漑(かんがい)」も最適な配分が自動的に行われるので、水の無駄がなくなります。

ICT水管理の効果と将来の課題

従来の水管理を行う対照区と、ICT水管理システムを実施したA~Gの7つの地区を比較した実証試験では、「水管理の労力」はおよそ8割減らすことができました。また水稲の収穫量は6%アップします。収穫面においては、大規模農家で特に有効ですが、増収効果が期待できるというよりも、減収をおさえる効果が期待できると見られます。 ただしICT水管理システムは、「ICTリテラシーの向上」と「導入費の低コスト化」が解決すべき今後の課題とみられています。