営農支援システム

「データによる農業」とは?

ICT(情報通信技術)を活用したスマート農業は、「ロボットによる農業」と「データによる農業」で構成されます。前者は体を使う農作業をロボットが行うもの、後者は頭を使う営農判断をデータにもとづいて行うものです。では、データによる農業とは、具体的にどのようなものなのでしょう?

熟練農家の営農ノウハウから学ぶ

農業の意思決定は、今までは熟練農家の経験や勘(かん)などの営農ノウハウにもとづいて行われてきました。データによる農業では、これら熟練農家の意思決定プロセスを解明し、ビッグデータとして公開して多くの人が利用できるようにします。 具体的には、環境などのさまざまなデータや、熟練農家の作業履歴などのデータを、時間情報〈いつ?〉と位置情報〈どこで?〉と合わせて分析センターで分析し、農業などの専門家の意見も加えて営農ノウハウとします。これをビッグデータで公開することで、農業の魅力が向上し、経験が足りない若い人などが農業に参入しやすくなります。

営農支援システムの機能の例① ──圃場管理と作業記録

データにもとづく農業を行う上で、農業従事者の営農判断を助けるシステムが「営農支援システム」です。これは各社が独自のシステムを販売していて、農業経営に関するすべての情報をクラウドで一元管理できるような仕様になっています。 たとえば、たくさんの圃場の管理や日々の作業の記録も、営農支援システムなら、いつ、どこで、誰が、どのような作業をしたかを、選択肢から選んで簡単に記録できます(画像左)。また、日誌を振り返る時もクリック1つで一覧から簡単に見ることができます(画像右)。

営農支援システムの機能の例② ──作業進捗状況と栽培計画の立案

圃場が多い場合、どの圃場でどれくらい作業が進んだかを従業員が共有できずに作業漏れなどが起こったりします。営農支援システムを使えば、全体の進捗状況がグラフや表などで可視化されるため把握がしやすく、さらにスマートフォンなどで入力するだけでリアルタイムで進捗状況を記録できます。また、圃場ごとの作付け計画機能のほか使用予定の肥料や農薬の量などから費用をあらかじめ試算する機能を持つ営農支援システムもあります。

画像:進捗状況の表示の一例。円グラフや写真のグレーの部分が、耕耘作業が行われていない圃場。

さまざまな対応機との連携

クラウドとつながっているトラクターやコンバインなどの農機やドローンなどから得た作業記録や、作物のタンパク質量などの測定情報が営農支援システムに送信され、自動で記録されます。つまり、スマートフォンやパソコンによる入力の手間も省けるわけです。今後は、メーカーやシステムを超えてデータを共有するための相互互換性を実現する動きが進んでいくでしょう。

画像:作業中のコンバインから(株)クボタの営農支援システム「KSAS」に送信されたタンパク値(食味)のデータ。