ピンポイント防除技術
ピンポイント防除技術の目的
農薬を圃場の必要なところに必要な量を散布できれば、環境への配慮のみならず、営農上の資材コストの抑制にもつながります。これまでは農薬散布に無人ヘリコプターが用いられてきましたが、作業性の比較試験から、現在は図のようなドローンの優位性が確認されています。
ピンポイント防除技術の全体像
衛星やドローンによるリモートセンシングで雑草や病害虫の被害を発見し、その分析データを防除機器に転送。そのデータにもとづいて農薬散布ドローンやスプレーヤなどの防除機器がピンポイントで自動的に農薬を散布します。
リモートセンシングで雑草は特定できるのか?
広さ4ヘクタールの北海道訓子府(くんねっぷ)実証試験農場でドローンによるセンシングを行った試験では、1ヘクタールあたり5分ほどのセンシングと数分の解析によって、雑草のエゾノギシギシの生育状況を知ることができたとされています。上のマップの1グリッド(1コマ)は3.6m×3.6mで、全部で4860グリッドで構成されています。左のマップはエゾノギシギシ1株を青で表示。中央は2株以上を青、4株以上を赤で表示。右は3株以上を青、5株以上を赤で示しています。
ピンポイント防除技術で使用される機器(北海道の農業協同組合ホクレンの例)
ドローンによるセンシングではRGBカメラが圃場を撮影し、その画像からAI(人工知能)が雑草の生えている位置を特定します。実際の防除機器としては、たとえばXAG P30農薬散布用ドローン(画像左上)や、iXterシリーズのブームスプレーヤ(画像右)、地上を走行する小型の無人散布車両(画像左下)などがあります。散布が必要な区域と不要な区域を識別して自動的に散布作業を行うので、位置情報を把握するためのGNSSガイダンスが必要となります。ただし、まだ自動でデータ連携できない機種もあります。
実際の効果と今後の課題
2022年7月にホクレンが行った実証試験では、4ヘクタールの圃場に雑草(エゾノギシギシ)が1万5322株確認されましたが、ピンポイント散布を実施して29日後にセンシングしたところ983株にまで減少。ピンポイント防除の有効性が実証されました。 現在、農薬散布用ドローンでデータ連携させるためのシステム開発や、規制上、無人航空機で使用できる除草剤の登録が待たれています。