クラウド型データベース
農業は大量のデータを合理的に活用しなければならない
図は水田での作業の流れと、それに必要とされる情報を表しています。ごらんのように、「土壌の状態」や「気温・湿度」、さらには「従業員の労働時間」や「肥料代」「燃料費」のほか経営管理の情報など、非常に多くの情報が必要になります。今まではこうしたデータを農家の人が独自に手に入れて、情報ごとに専用ソフトを使って自分で整理して頭の中でデータを突き合わせていました。これにはたいへんな時間や労力を取られることになります。
クラウド型データベースは「広大な空間」を活用する
パソコンでアプリや基本ソフト、データをあつかう場合、どうしてもHD(ハードディスク)の容量による制限を受けます。これに対し、「クラウド型データベース」は、インターネットの情報サービスを提供する「クラウド」を使います。クラウドはSaaS(サーズ)、PaaS(パース)、IaaS(アイアース)の3つの要素から成り立っています。つまりクラウド型データベースは、今までのHDという「限られた空間」のかわりに、インターネットという、「広大な空間」を利用するわけです。
気象データと、それにもとづく予測情報を得る
クラウド型データベースの利用例としては、たとえば気象情報の提供があります。インターネットを通じてクラウド上に地域の気象情報を集め、利用者はパソコンやスマホ、タブレットなどから知りたい場所の観測情報を確認できます。それだけでなく、日照時間や表面温度などのデータから、病害虫の発生予想や、作物の生育予想とそれにもとづく収穫予想といった、データ分析によって加工された情報も提供します。
農作業の精度アップから ぼう大な画像情報の処理まで
農家の作業記録や作物の生育ステージの記録など、営農上のデータを農家が記録できるフォーム(いわゆる“作業日誌”)をクラウドに提供しているメーカーがあります。これを参考にすれば、予測の精度が上がります。また、ドローンが撮影した画像から作物の生育状況を知ろうとすると、圃場が数ヘクタールなら写真は数百枚にも上ります。これらをクラウドにアップロードすれば、数百枚の写真を1つに統合し、さらに生育に合わせて色分けするなどの情報加工も簡単にできます。
クラウド型データベースの将来
現在、クラウド上にデータを集約させるサービスを主要な農機メーカーが提供しています。しかしここでは、個々のメーカー内のデータを連携させることはできますが、異なるメーカーのデータを連携させることができない場合があります。今後はこうしたメーカーの壁を越えて複数のメーカーのデータをクラウド上で連携させていく動きが進むでしょう。これによってデータの活用性が上がり、農業の合理化・省力化に貢献できるようになると考えられています。