AI(人工知能)

スマート農業での利用が期待されているAI

AI(人工知能)は、人間と同じ、あるいは人間以上の知的な活動をコンピュータ上で人工的に再現するものです。人間に代わってAIが自動車を運転する「自動運転」や、スマホなどの「音声認識」などが、ニュースでもたびたび紹介されています。農業では、収穫時期の予想や、車両ロボットの安全対策、作物の品種の分別や生育状況の判断など、さまざまな分野での利用が期待されています。

AIも「学習」して成長する

私たちは、学校で教科の大切なポイント(特徴)を学び、そしてテストで出される「初めて見る問題」に取り組んで答えを出します。AIも同じで、まずぼう大なデータをAIに与えてその特徴を理解させます。これを「学習」といいます。学習の方法には、データといっしょに正解を与える「教師あり学習」と、正解を与えない「教師なし学習」の2つがあります。ただし、学習でAIに理解させる特徴は、さまざまなケースに当てはまる、汎用性のあるものでなければなりません。

AIをつくってみよう!──ステップ1「計画を立てる」

AIは5つのステップで開発されます。たとえば「木になっているリンゴを検知するAI」を教師あり学習で開発するとした場合、ステップ1「計画を立てる」からはじめます。この段階では、開発スケジュールとともに「5W1H」をはっきりさせます。つまり「Who(だれが)」「When(いつ)」「Where(どこで)」「What(何を)」「Why(なぜ)」「How(どうやって)」という点をはっきりさせるのです。中でも「Why(なぜ)」が最も重要です。この計画段階では、AIの知識だけでなく、農業そのものへの豊富な知識や経験が必要となります。

ステップ2:データ収集
ステップ3:前処理

「データ収集」では、学習させるためのデータとなるリンゴの画像をたくさんカメラで撮影します。学習したAIの検知精度が低いことがあとでわかったら画像データを増やしますが、この最初の段階でなるべくたくさん撮影します。 ステップ3「前処理」では、画像に処理を施します。画像のサイズや明るさを変えたり、反転やぼかしたりなど、画像に加工をほどこす「水増し」、画像のリンゴをボックス(色付きの枠)で囲んで強調する「ラベリング」の2つの方法があります。

ステップ4:AIモデル構築

ステップ4では、いよいよAIモデルをつくります。まず「学習」を行います。画像のどこに注目するかなどにもとづいてAIに一度リンゴを検知させ、「赤いリンゴはここ、黄色いリンゴはここ」と推論結果をださせます。これがリンゴ検知AIの「バージョン1」で、あとは誤差を小さくするように修正してバージョン2、3、4……と進め、正解に近い推論結果を出せるAIがつくられていきます。次の「評価」では、学習で使わなかった別の画像データを用いて精度を評価します。

くり返しが大切となるAI開発

最後のステップ5は、「テスト」です。学習でも評価でも使われなかった画像データを用いて、AIの判断のかたよりを直していきます。 このように、AIは5つのステップをへて開発されます。優秀なAIにするためには、おのおののステップを一度で終わらせるのではなく、くり返すことが大切です。また、農業分野向けのAIを導入する時には、農業従事者もAIについての正しい知識が必要となります。